告訴には、基本的に次の3要件が必要とされています。
この3要件は、最低限の要件です。
これら要件が揃っていても、時効の完成等により告訴ができない場合もあります。
要件1 告訴権者からの告訴であること
告訴は、告訴権者が行います。
告訴権者の基本は「犯罪により害を被った者」つまり被害者です。
ここでいう被害とは、直接の被害のことです。
名誉毀損にあった、詐欺の被害にあったといったときの被害者になります。
会社が被害にあった場合、会社も告訴人となることができます。
選挙違反、贈収賄といった事件では、公正な選挙、公正な行政が歪められ、一市民として間接的な被害を受けたかもしれません。
また、自分は被害者とは無関係だが、義憤を感じ犯人を処罰して欲しいということもあるかもしれません。
この場合には、告訴ではなく「告発」になります。
こちらも参照ください ”告訴・告発・被害届の違い”
また、被害者の法定代理人も告訴権者となります。
告訴権者に関する詳細な規定は他にもありますが、一般的には、直接の被害者または法定代理人となります。
一方、匿名による「告訴状」を提出しても、告訴権者であるかがわかりません。
この場合には、告訴状としての要件を欠くことになります。
要件2 犯罪事実の申告であること
告訴は、犯罪事実を申告して行わなければなりません。
告訴では、いつ、どこで、どのような犯罪があり、どのような被害があったのかといった犯罪事実を示す必要があります。
犯罪であることがある程度明らかでないと、捜査機関も捜査を進めることはできません。
たとえば、詐欺事件であれば、事実を示したうえで、その行為が刑法の詐欺罪の要件である
- 欺罔(騙したこと)
- 錯誤(嘘を信じて騙されたこと)
- 交付(お金などを渡すこと)
- 移転(相手が受け取ったこと)
を満たすことを示すことになります。
ただ実際のところ、すべてにおいて日時、場所、犯罪の詳細を示せるわけではありません。
わかる範囲で、ある程度の特定ができていれば差し支えありません。
また、罪名についても、詐欺なのか横領なのかよく分からないこともあります。
告訴状は、被害の申告ですから、その時点で見込まれる罪名を記すことになります。
インターネットによる誹謗中傷等で犯人の氏名がわからないこともあります。
その場合には、被告訴人名は「不詳」で構いません。
要件3 犯人の処罰を求めていること
告訴には、犯人の処罰を求める意思表示が必要です。
処罰を求める意思表示については、告訴状に
被告訴人の下記行為は、刑法第○条に規定する○罪に該当すると思料するので、捜査の上、被告訴人を厳重に処罰されたく告訴します。
などと書き示すのが、一般的です。
「謝罪や賠償があれば刑事処分を求めない」という場合だと、「処罰を求める意思表示」には至らないことになります。